刑事裁判は、ドラマなどで見る機会が多くなってきました。しかし、逮捕されてから裁判になるまでの間の過程を見る機会は、まだまだ少ないかと思います。裁判は、証拠に基づいて行われますので、証拠が作成される過程、すなわち逮捕されてから裁判までの過程は、刑事事件において非常に重要です。また、逮捕前であっても、捜査機関からの出頭要請があり、重要参考人として取り調べを受けることもございます。ご不安なことがあれば、弊所にご相談ください。

刑事事件の一般的な流れ

逮捕

被疑者に犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、逮捕をする必要性がある場合に限って、身体拘束が認められます。通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕という種類がある。

逮捕の主体によって、時間制限が異なり、司法警察員が逮捕した場合、48時間以内に検察官に送致し、検察官は24時間以内に、勾留請求・公訴提起・釈放のいずれかを判断しなければなりません。この時間制限が遵守できない場合は、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。なお、やむを得ない事情によって時間制限を遵守できなかった場合に限って、勾留が認められる場合があります。

また、現行法において、逮捕段階で、逮捕の違法を主張する手段はなく、後に続く手続の中で、逮捕の違法を主張していくことになります。

被疑者勾留

被疑者勾留は、逮捕後、被疑者の逃亡及び罪証隠滅を防止するため、裁判官が行う処分で、原則的に、勾留日から10日間とされています。やむを得ない事由がある場合に、最大10日間の勾留延長がされます(ただし、内乱罪等の重大犯罪には、さらに最大5日間の勾留延長が認められています。)。

勾留は、①勾留の理由(罪を犯したと疑うに足りる相当な理由)と、②勾留の必要性がある場合に認められます。勾留の必要性とは、ⅰ住所不定、ⅱ罪証隠滅のおそれ、ⅲ逃亡のおそれのいずれかに該当することです。

勾留後は、準抗告という手続で、上記の要件を充足していないなどの主張することが可能になります。

接見等禁止決定

接見等禁止決定とは、罪証隠滅のおそれなどがある事件(共犯事件など)について、弁護人などを除いて、被疑者勾留をするとともに接見等を禁止するものです。この接見等禁止決定が付された場合には、家族であっても被疑者と接見することができません。この接見等禁止決定がされた場合の弁護活動としては、接見等禁止決定の取消しを申し立てて、接見等禁止決定を取り消すか、裁判官の職権の発動を促し、家族などの一部の者のみについて、接見等禁止決定の一部解除を認めてもらうことが考えられます。

公訴提起(起訴)

公訴提起(起訴)とは、検察官が、裁判所に対して、刑事裁判を求める訴えです。検察官は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」を考慮し、公訴提起をするか否かを決めることができます(これを「起訴便宜主義」といいます。)。

弁護人は、公訴提起の前に、示談を結ぶなどの活動を行い、不起訴処分を獲得できるように弁護活動を行います。

保釈

保釈とは、公訴提起後に、一定額の保釈保証金を納付することにより、身体の拘束を解く制度です。権利保釈(必要的保釈)と義務的保釈(職権保釈)があります。実務上、保釈を許可されるためには、身元引受人が必要とされています。

保釈保証金の金額は、被告人の出頭を確保するに十分な金額でなければならないため、収入が多い被告人の場合は、保釈保証金の金額が高くなることがあります。なお、保釈保証金は、被告人が逃亡等をせずに、裁判が終了すれば、返還されます。

Q&A

Q1逮捕されていなくても、刑事事件の相談はできますか。

A1もちろん承っております。捜査機関の取り調べ前に弁護士からアドバイスをもらった方が良い場合がございます。また、仮に、捜査機関の捜査が始まっていない段階でも、示談を結ぶことなどによって、刑事事件化することなく、お悩みを解決できる場合がございます。

Q2逮捕・勾留されていない段階で、弁護士に依頼するメリットはありますか。

A2アドバイスが受けられることは当然として、被害者が加害者本人と会うことは拒否されても、弁護士であれば、会っても良いという場合がございます。実際に、被害者と話ができたことにより、示談が結べるケースもございます。

Q3家族が逮捕されました。本人ではないですが、相談できますか。

A3もちろん承っております。ご相談をしていただき、ご依頼をいただければ、弁護人となろうとする者という地位で逮捕・勾留されているご家族と接見することが可能です。また、接見において、逮捕・勾留されているご家族の同意がいただければ、そのまま弁護人になります。

Q4国選弁護人と私選弁護人のどちらが良いのですか。

A4一概にどちらが良いということはございません。もっとも、国選弁護人は、原則として、自身で選ぶことができません。そのため、ご自身と相性の悪い弁護士が選任される可能性はございます。

Q5被害者が示談を拒否しています。この場合にできることはありますか。

A5被害者に財産的な損害が生じている場合には、法務局に損害相当金を供託できることがあります。供託により、被害回復が可能な状態になりますので、検察官が起訴・不起訴の処分を決定する際に被疑者側に有利な事情となります。具体的には、被害者に生じた損害に、遅延損害金を上乗せして、供託することになります。

Q6保釈の際に必要とされる身元引受人というのは、どのような人ですか。

A6身元引受にんとは、保釈中の被告人の身元を引き受け、監督する人物で、一般的に、両親などの家族がなることが多いです。もっとも。雇用主や友人などが身元引受人になるケースも存在します。法律上、保釈の許可の要件とはなっておりませんが、運用上、必要とされており、保釈が許可されるためには必要となります。

Q7手元に保釈保証金がありません。保釈保証金を借りられる機関などはありますか。

A7日本保釈支援協会の保釈保証金立替システムにより、保釈保証金を立て替えてもらうことができます。

また、全国弁護士共同組合連合会の保釈保証書発行事業を利用するという方法もございます。

なお、両制度とも一定の費用がかかること、被告人自身が申し込むことができないなどの条件があります。